コラム

2010年2月号

データで見る不動産取引動向
「不動産投資家調査に見る期待利回り格差の推移」

【図表 不動産投資家調査に見る期待利回り格差の推移】
出所)財団法人日本不動産研究所「不動産投資家調査」をもとに住信基礎研究所作成
注)強気な投資家 :不動産投資家調査の回答結果のうち下位0~25%の平均値
  平均的な投資家:不動産投資家調査の回答結果のうち下位25~50%の平均値

不動産取引の実態としては、全体的な市況感とともに、成約可能な高い金額すなわち低い期待利回り(≒キャップレート)を提示できる投資家の動向がより重要である。ここでは財団法人日本不動産研究所が実施する「不動産投資家調査」における期待利回りを取り上げ、不動産取引の状況を概観した。具体的には全体的な市況感として回答結果の全ての平均値を、強気な投資家の目線として回答結果の下位0~25%の平均値を、平均的な投資家の目線として回答結果の下位25~50%の平均値を、さらに強気な投資家と平均的な投資家の期待利回りの格差を、それぞれ取り上げその推移を記した。

なお市況高騰期には、通常買い手側となる強気な投資家と平均的な投資家との期待利回りの格差が大きくなることから、取引に参加可能な投資家が限られ取引は低調となる。一方、市況悪化期にも、通常売り手側となる強気な投資家と平均的な投資家との期待利回りの格差が大きくなることから、売買が成立せず取引も低調となる。いずれの場合も、強気な投資家と平均的な投資家の期待利回りの格差は、不動産の取引状況を示す指標とみなすことができる。

期待利回りの平均値と強気な投資家の期待利回りは、2007年10月まで一貫して低下傾向を示しており、強気な投資家が市場全体を先導していたことが伺える。これに対し平均的な投資家の期待利回りは2006年4月から低下傾向にブレーキがかかり、両者の格差が拡大した。平均的な投資家はインカムリターンを収益源とした長期投資を旨としており、当時の期待利回り水準では必要なリターンが得られないと判断した模様である。

その後サブプライムローン問題の影響やJ-REIT市場の悪化等を嫌気して、強気な投資家を中心に売りが先行し、期待利回りも2007年4月から上昇に転じている。ただし同時期、実体経済に対する楽観的な見通しから、買い手として期待された平均的な投資家の期待利回り上昇は限定的で、両者の格差は2008年10月まで縮小傾向を示し、取引の再開が期待された。ところが直後のリーマンショック等によって平均的な投資家のマインドも急速に悪化し、両者の格差は再度拡大に転じ、現在に至っている。

今後は、その他投資家の期待利回り(回答結果の下位50~100%の平均値:図表では省略)が既に2009年4月以降低下していること、強気な投資家と平均的な投資家の格差が極めて大きいこと、実体経済の回復に伴いファンダメンタルズに反応しやすい平均的な投資家の期待利回りが下がると考えられること等から、期待利回りの平均値もさらに低下すると思われる。この結果、現時点で売り手側にいる強気な投資家と、買い手側にいる平均的な投資家の利回り目線も近づくため、リファイナンス等により取引市場には拠出されず再投資される案件も含め、取引圧力が強まることが予想される。

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